2016年10月26日水曜日

補絹補彩‐修理工程紹介‐

今回はただいま作業中の修理工程を紹介いたします。

掛軸作品は巻き広げによって本紙に負担がかかり、横に筋状の傷みが発生しやすいです。
絵具の浮き上がりや剥落、本紙が切れてしまうことも・・・
このように切れてしまったり、虫食いなどで無くなってしまった本紙(この作品の場合は絹)の部分には、似合いの紙または絹で穴埋めを施します。(補絹)
穴が埋まっていなかったり、逆に残っている本紙部分に重ねてしまうと段差が生まれ、新たな傷みに繋がっていまうので、ライトで透過しながらぴったりの形に刳り貫き貼り付けていく、根気の要る作業です。

補絹が完了したあとは、補彩部分を周りになじませます。(補彩)
透明水彩絵具から抽出した顔料を膠水で薄く溶き、濃くなり過ぎないよう少しずつ塗り重ねていきます。
こちらも本紙に絵具がのらないよう注意を払いながらの集中力が必要な作業です。


補絹補彩が完了すると本紙の修理は概ね終了。あとは表具の形への仕立て直しを待つばかりです。

2016年10月11日火曜日

「災害と文化財」講座終了

かねてよりお知らせしておりました、「災害と文化財」講座を本日開催いたしました。

本日のプログラムは
 1.開催挨拶 
     北田克己(文化財保存修復研究所所長)
 2.講演① <被災紙資料の安定化処理について>
     鈴木晴彦((株)修護)
 3.講演② <文化財と災害>
     高梨光正(愛知県立芸術大学芸術学准教授/前国立西洋美術館主任研究員)

―――――休憩―――――

 4.<愛知県の現状について>
     大島敦臣(愛知県教育委員会生涯学習課文化財保護室)
 5.質疑応答
 6.法隆寺模写展示館/文化財保存修復研究所見学

でした。
今回の講座は東海3県の美術館・博物館や市町村の文化財行政に関わる方々にお声掛けし、東日本大震災での文化財レスキューを実際に経験された先生方のお話をふまえてこの地方での文化財の防災について考えるきっかけづくりという趣旨での開催で、28名の方(うち学生7名)にご参加いただきました。 
大規模な災害が発生した際に文化財を守るためには物理的な設備の拡充はもちろん、人的なネットワークの充実も大切です。今回の講座を通して地域の文化財に関わる皆様と、現状と今後の課題を共有できたことは本研究所にとっても大きな収穫となりました。
今後も継続してこのような機会を設けたいと思います。


各プログラムの様子

講演① <被災紙資料の安定化処理について>

講演② <文化財と災害>

<愛知県の現状について>

<質疑応答>

<法隆寺模写展示館見学>


2016年10月4日火曜日

「災害と文化財」講座 参加募集締め切りました。

本日、10/11(火)開催の「災害と文化財」講座参加申し込みを締め切りいたしました。
メール申し込みで受付完了のご連絡が届いていない方がいらっしゃいましたら、お手数ですが下記までお電話でお問合せ下さい。

0561-76-7611(文化財保存修復研究所直通)※平日9時~17時

2016年9月26日月曜日

「災害と文化財‐地域文化財を守るために‐」開催のお知らせ

前回のブログで告知をしておりました、修復研究所主催講座の概要が確定いたしましたので、改めてお知らせいたします。

愛知県立芸術大学 文化財保存修復研究所主催講座
災害と文化財-地域文化財を守るために-

日時:2016年10月11日(火) 13:00~16:00
場所:愛知県立芸術大学 文化財保存修復研究所2階 
    愛知県長久手市岩作三ケ峯1-114(最寄り駅:リニモ「芸大通」駅下車、徒歩15分)
    ※駐車場わずかなため公共交通機関でお越しください。


申込:下記連絡先にお名前・連絡先・所属団体をお伝え頂き、お申込み下さい。(先着30名・平日9~17時受付)
 愛知県立芸術大学 文化財保存修復研究所
 電話:0561-76-7611/0561-76-2851  Fax:0561-76-7611
 メール:bunkazai@mail.aichi-fam-u.ac.jp





2016年8月3日水曜日

文化財を守るために〔関連講座企画中〕

 愛知県立芸術大学 文化財保存修復研究所では、災害時に地域の文化財を守るための講座を企画しています。

阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震などを経て、愛知県近隣においても南海トラフ地震や東海地震の発生および被災が心配され続けています。
災害時において最も優先されるべきは人命救助。そしてライフラインの復旧。文化財の保護はその後にようやく始められるでしょうか。
しかしながら、傷ついた人々の心の拠り所になる可能性を持つものとして、地域文化財は存在します。だからこそ古の人たちから伝えられて、今日までも守られて来たとも言えるでしょう。

私たちの地域文化財を守るためには今何が必要なのか、講座を通して学び考えていきたいと思います。
まだまだ企画段階ですが、詳細が決まり次第こちらでも告知していきます。


  • 日時:2016年10月11日(火)PM
  • 会場:愛知県立芸術大学



2016年7月11日月曜日

科研+膠研 公開研究会終了いたしました

先日当ブログでも告知させてただきました、
科研+膠文化研究会 第9回公開研究会「膠と継承者」が、7月9日に本学新講義棟にて開催されました。
当日はあいにくの雨模様にも関わらず、足元の悪い中大変多くの方にご来場いただきました。

会場内の様子
今研究会の内容は、
 ・「三千本膠『飛鳥』の開発について」 
        土居 昌裕(旭陽化学工業株式会社技術部長)
 
・「模写という道」
        加藤純子(名古屋城本丸御殿障壁画復元模写制作共同体)
    聞き手  北田克己(愛知県立芸術大学美術学部教授)

 ・「伝統技法と素材(紙・絵具・膠)
        上村淳之(日本画家・文化功労者・京都市立芸術大学名誉教授)

 ・「膠の基礎知識」リーフレットについて
        宇高健太郎(日本学術振興会特別研究員)

の4つの講演プログラムと全体を通しての質疑応答があり、
その後に希望者へ向けて保存修復研究所の見学会も行われました。
こちらも多くの方にお越しいただき、各部屋で熱心に説明を聞いていただきました。
また、夜には懇親会も開催され、様々な分野で膠に携わる方々の交流がありました。


今回、東京以外での初開催と言うことで本学日本画研究室を中心に準備が進められ、当研究所も後援として参加させていただいた公開研究会ですが、膠は保存修復分野においても欠かすことのできない重要な素材です。参加者の皆様とともに多くのことを学べた貴重な経験となりました。


○各講演の様子
土居昌裕氏 「三千本膠『飛鳥』の開発について」


加藤純子氏 「模写という道」


 上村淳之氏 「伝統技法と素材(紙・絵具・膠)」



宇高健太郎氏 「膠の基礎知識」リーフレットについて

2016年7月6日水曜日

保存修復学会に参加しました

6月の25、26日の二日間に渡って開催された、「文化財保存修復学会 第38回大会」に参加いたしました。
保存修復学会は年に1度開催され、保存修復に関わる様々な団体が一堂に会しそれぞれの研究成果や事例報告を行う場で、口頭発表とポスターセッションの大きく分けて2つの構成で開催されました。
口頭発表では保存環境、制作技術、マネジメント、保存・修復事例など6つのセクションに分けて様々な発表が行われ、ポスターセッションにおいても様々な切り口からの研究報告があり、今後の研究所運営に生かしていきたいと思います。
また、26日には当研究所も昨年度完了した教圓寺蔵「阿弥陀如来像」と「金地墨絵屏風」の修理に関してのポスター発表を行いました。

発表時の様子


2016年6月17日金曜日

光学調査についての講義がありました

本日は青木智史先生をお迎えし、日本画大学院生を対象とした講義を行っていただきました。
先生はこれまで数々の考古美術作品の光学調査を行われており、講義では先生が実際に携わられた調査を例に交えながら光学調査の行い方、得られたデータの読み解き方などをお教えいただきました。


午後からは修復研究所でお預かりしている物件について実際に赤外・紫外線撮影などの調査を行っていただきました。
特殊な機材を用いる調査では機材の扱いはもちろん、データの読み取りには知識と経験が必要となりますが、このような調査を通して使用されている素材や技法などの新たな発見もあります。

作品の保存修復とあわせてこのようなデータを蓄積していくことも当研究所の重要な役割です。

2016年6月10日金曜日

膠文化研究会による公開研究会「膠と継承者」が開催されます

膠に関する継続的な研究、教育普及を行っている団体・膠文化研究会の第9回公開研究会が、7月9日(土)に愛知県立芸術大学で開催されます。
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日時:2016年7月9日(土) 午後1時より
場所:愛知県立芸術大学 新講義棟
定員:先着100名(要申し込み)
参加費:無料
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本研究所も後援という形で協力しています。
申し込み、プログラム内容等、詳しくは膠文化研究会のWebをご参照下さい。

(膠文化研究会Webサイト→http://nikawalabs.main.jp/index/


2016年6月9日木曜日

平成26年度年報を掲出いたしました

昨年度に発行いたしました、
「愛知県立芸術大学 文化財保存修復研究所 年報‐平成26年度」
をWEBページとして公開いたしました。(画面上部メニュー 「平成26年度年報」にカーソルをあわせると各ページが表示されます)
一昨年度に完了した修復物件や「伝真言院両界曼荼羅胎蔵界・金剛界」現状模写に関する報告及び、研究所主催で開催いたしました公開講座についても掲載しています。

昨年度版に関しても本年度中に作成予定ですので、冊子完成後また本サイトに掲出いたします。


2016年6月2日木曜日

名古屋城本丸御殿第二期公開が始まりました

昨日、6月1日より名古屋城本丸御殿の第二期公開が始まりました。
本丸御殿の復元事業では本学の卒業生が障壁画の復元模写というかたちで関わっているほか、昨年の12月には修復研究所としても、平成25年度より公開されている玄関・表書院の障壁画まわりの清掃作業を行いました。(清掃作業の模様は当ブログでもご紹介しています)
第二期公開では対面所、下御膳所が公開され、「風俗図」などがお披露目されます。

絢爛豪華な障壁画の数々をぜひご覧下さい。




名古屋城公式WEBサイト:http://www.nagoyajo.city.nagoya.jp/index.html

2016年5月26日木曜日

納品がありました

地元長久手の寺院よりお預かりした屏風が修理を終え、先日納品を行いました。



こちらの作品は二曲一双の箔押し屏風で、一からの下地新調、箔押し紙での補紙・補彩など様々な経験をさせていただくことができました。
本来は衝立など、調度品として作られていた屏風。修理によってまた永く活用していただけるものに生まれ変わりました。






2016年5月19日木曜日

仮張り作り

修復の作業では様々な道具を使用しますが、その中には市販されておらず特注で作っていただくものや、必要に応じて自分たちでて作るものもあります。本日は仮張り作りについてご紹介します。
仮張りとは裏打ちを行った本紙や裂を糊止めし、ピンと張った状態で乾燥させるために使用する板で、格子状の木組に和紙を貼り重ね、柿渋を塗って作ります。柿渋には防水性があるため、乾燥後にはがしやすく、また仮張り本体が傷みにくくなる効果もあります。



こちらは骨縛りという工程で、下地骨と呼ばれる木組に糊を付け、紙を貼り付けているところです。これを表裏両面行い、さらに蓑かけ、蓑縛りと和紙を貼り重ね、柿渋を塗って仮張りの完成となります。
この下地骨、骨縛り、蓑かけ、蓑縛りといった構造は屏風や襖、和額装などにも共通する構造で、仮張り作りがこのような表具工程の練習にもなります。













2016年5月11日水曜日

肌裏上げ -修復工程紹介-

本日は現在進行中の修復作業についてご紹介いたします。


こちらは掛軸装から周りの裂を取り外し、本紙裏面に接着されている裏打ち紙を除去しているところです。
掛軸装の仕立てでは、本紙の裏面に肌裏打ち、増裏打ち、総裏打ちと最低でも3回の裏打ちが行われますが、解体修理では、本紙を傷つけないよう細心の注意を払いながらこれらの裏打ち層を1層ずつはがしていきます。
本作品は幅1m、高さ1.5mあまりの大きな作品のため大学院学生も含めて数人がかりでの作業となりました。
こちらの作品は、補修の必要な欠損・傷みもほとんどないため、新たに裏打ちを行い裂も取替えて修理完了となります。

2016年4月27日水曜日

取材がありました

 先日、修復研究所にテレビカメラの取材が入りました。
  
この日は大学院の修復実習授業日で、真剣な面持ちで先生からの指導を受けている学生の表情にも、 心なしかいつも以上の緊張感が。


 このように様々なメディアを通じて文化財保存について皆様に周知いただくことも、当研究所の仕事の一つです。

また放映日など決まりましたらこちらでお知らせさせていただきます。

2016年4月13日水曜日

平成28年度スタート


平成28年度がスタートし、保存修復研究所も3回目の春を迎えました。
昨年度には5件9点の修復事業が完了し、納品をいたしました。
本年度では5件10点の修復事業を受託しており、今年度末または来年度末の完成・納品に向けてさっそく作業がスタートしています。
大学院の新年度初回の修復実習授業となる本日は新1年生に、先生より道具の説明などを行った後、修復作品の絵具が落ちないように膠液をさしていく「剥落止め」という作業を行いました。

本年度も修復事業の様子を中心に、修復研究所の様々な活動をこちらでお伝えしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。


修復研究所一同


2016年2月24日水曜日

今年も古糊作りの時期が来ました

寒糊炊きをしました


作品を修復するに当たって工程毎にいろいろな種類の糊を使用しますが、今回作った糊は「古糊」と言う種類の糊の準備をしました。
作りたての糊だと接着力が強すぎる為、甕の中で数年をかけて寝かせます。そうすると段々作業に適した糊の接着力に落ち着くのです。

まず糊を炊いて


 
甕に移します
 
 
甕の蓋の縁を糊を付けた和紙で貼り付けます。
この甕の中の糊は数年後の修復作品に使われていく事になります。
自分が作った糊甕をいずれ後輩が空けるのです。
こういった「継承」も感慨深いものです。
 
 
 


2016年2月15日月曜日

名古屋市美術館ワークショップ「科学の眼で見る絵画」

2月14日(日)、名古屋市美術館にてワークショップ「科学の眼で見る絵画」が催されました。

名古屋市美術館の常設企画展では、現在《愛知県立芸術大学・名古屋市美術館 共同研究 北川民治の絵画技法―自然科学的調査と再現研究を通して―》が開催されています(21日まで)。
この企画展に合わせたイベントで、当文化財保存修復研究所も協力をしました。

ワークショップ講師は愛知芸大でも教鞭をとる森田恒之先生で、マイクロデジタルスコープを用いて試料の観察などを行い、眼で見えている情報に対する科学的な情報について、講義されました。
さらに、実際に展示中の絵画についてのレクチャーも行われ、参加者からは「絵の見方が変わる」とか、「気付かなかったことに気づかされた」などの声が聞かれました。


展示中の絵画を例に講義

2016年2月2日火曜日

名古屋城本丸御殿復元模写障壁画の清掃作業をしました。


1月13.14日の名古屋城本丸御殿の営業終了後に、模写障壁画周りの清掃作業をしました。

模写障壁画の周りの縁に積もったほこり等を、慎重に取り払っていきます。


 
 
払ったほこりは掃除機で吸い取って掃除完了です。
 
 
縁が綺麗になって、一段と模写障壁画の輝きも増したように感じます。